1. 通勤時間欄の基本ルール〜まずこの3点を押さえる

 通勤時間欄の書き方には、明文化されていないものの広く共有されているルールがあります。最初に次の3点を押さえておけば、大きく外すことはありません。

  • 片道の時間を書く:往復ではなく、自宅から勤務地までの片道の所要時間を記入します
  • ドアツードアで計算する:自宅の玄関を出てから勤務先の入口に着くまでの時間です。駅までの徒歩、乗り換え、待ち時間もすべて含めます
  • 5分単位で切り上げる:実測47分なら「50分」、1時間2分なら「1時間5分」のように、端数は切り上げてキリのよい数字にします

 書式は「約」を付けて「約50分」「約1時間10分」のように記入するのが一般的です。JIS規格に準拠した履歴書では「時間 分」と印字されているため、その場合は空欄に数字を入れるだけで構いません。

 なお、切り上げが基本なのは「実際より短く見せない」ためです。入社後に「50分と書いてあったのに実際は1時間以上かかっている」となると、通勤手当の再計算が必要になったり、信頼を損ねたりする原因になります。短く盛るメリットは何もないと覚えておきましょう。

 また、市販の履歴書には通勤時間欄がないフォーマットもあります。厚生労働省が2021年に公表した履歴書様式例には通勤時間欄がなく、これに準拠したテンプレートも増えています。欄がない履歴書を使うこと自体はまったく問題ありませんが、転居予定など伝えるべき事情がある場合は、本人希望欄に書き添えるようにしましょう。

2. 通勤時間の正しい調べ方

 感覚で書くのではなく、必ず実際に検索して確認しましょう。手順は次の3ステップです。

2.1 乗換案内アプリで検索する

 Google マップや Yahoo!乗換案内などで、自宅の最寄り駅から勤務地の最寄り駅までの所要時間を調べます。このとき、出社時間帯(例:平日8時台着)を指定して検索するのがポイントです。日中のダイヤと通勤ラッシュ時では、所要時間が10〜20分変わることも珍しくありません。

2.2 徒歩時間を加算する

 自宅から駅まで、駅から勤務先までの徒歩時間を足します。不動産表示で使われる基準は「徒歩1分=80m」です。距離が分かればこの基準で計算できますが、Google マップの徒歩ルート検索を使えばそのまま所要時間が表示されます。

2.3 端数を切り上げて記入する

 「駅まで徒歩8分+電車32分+駅から徒歩6分=46分」であれば、切り上げて「約50分」と記入します。乗り換えがある場合は乗り換えの待ち時間(1回あたり5分程度)も見込んでおくと、実態に近い数字になります。

 勤務地が求人票に「本社」としか書かれていない場合は、企業ホームページの会社概要で所在地を確認しましょう。複数の事業所があり配属先が不明な場合の書き方は、後述のケース別記入例で解説します。

3. ケース別の記入例〜電車・車・自転車・在宅勤務

 通勤手段によって書き方が少し変わります。よくあるパターンごとの記入例を紹介します。

3.1 電車・バスで通勤する場合

 最も一般的なパターンです。時間のみの記入で問題ありませんが、交通手段を書く欄がある場合や余白に書き添える場合は次のようにします。

  • 記入例:約50分(JR琵琶湖線利用)
  • 記入例:約1時間10分(東海道本線・バス利用)

3.2 車・バイクで通勤する場合

 地方の転職では車通勤が前提となる企業も多くあります。車通勤の場合は、通勤手当(ガソリン代)や駐車場の手配に関わるため、「車」であることを明記するのが親切です。

  • 記入例:約30分(自家用車利用)

 所要時間はカーナビアプリの通勤時間帯検索で調べます。渋滞を考慮しない深夜の所要時間で書いてしまうと実態と大きくずれるため、必ず朝の時間帯を指定して検索しましょう。なお、車通勤を希望する場合は、通勤時間欄ではなく本人希望欄に「可能であれば車通勤を希望いたします」と書き添えるのが定石です。

 関連記事:履歴書の本人希望欄〜書き方と注意点

3.3 自転車・徒歩で通勤する場合

 職場が近い場合も空欄にはせず、そのまま記入します。5分未満でも「約5分」と書けば問題ありません。

  • 記入例:約15分(自転車利用)
  • 記入例:約10分(徒歩)

3.4 在宅勤務・フルリモートの求人に応募する場合

 フルリモート前提の求人でも、通勤時間欄は空欄にせず、出社が発生した場合を想定してオフィスまでの時間を書くのが無難です。完全に出社がないことが明示されている場合は「在宅勤務のため通勤なし」と記入する方法もあります。

3.5 配属先・勤務地が未定の場合

 複数拠点があり配属先が分からない場合は、本社または募集拠点までの時間を記入し、必要に応じて「(本社までの場合)」と書き添えます。面接で配属先が判明したら、その時点で改めて確認すれば十分です。

3.6 新幹線・特急を使って通勤する場合

 新幹線通勤を前提に応募する場合は、時間だけでなく新幹線を利用する旨を必ず明記します。定期代が月数万円〜10万円超と高額になるため、企業側が通勤手当の規程内で対応できるかを判断する必要があるからです。

  • 記入例:約1時間10分(東海道新幹線利用)

 参考までに、公共交通機関を利用する場合の通勤手当の非課税限度額は月15万円ですが、実際に支給されるかどうかは各社の規程次第です。求人票に通勤手当の上限額(「月2万円まで」など)が書かれていることも多いため、応募前に確認しておきましょう。

4. 引っ越し予定がある場合の書き方【例文つき】

 この記事のメインテーマです。転居をともなう転職では「今の住所から書くと通勤2時間超になってしまう」というケースがよくあります。結論から言うと、引っ越し予定がある場合は「転居後の見込み時間」を書き、転居予定であることを明記するのが正解です。

4.1 転居先がある程度決まっている場合

 転居先のエリアが決まっているなら、そのエリアから勤務地までの時間を記入します。

  • 記入例:約30分(採用の際には貴社近隣に転居予定です)
  • 記入例:約20分(〇〇市内へ転居予定のため、転居後の見込み時間です)

 通勤時間欄のスペースが小さくて書き切れない場合は、時間だけを記入し、カッコ書きの補足は本人希望欄に書く方法でも構いません。

4.2 内定が出たら引っ越す予定の場合(UIターン転職など)

 遠方からの応募で「内定後に転居する」ケースでは、現住所からの時間を書いても意味がありません。次のように記入します。

  • 通勤時間欄:約30分(転居後)
  • 本人希望欄:「内定をいただいた際には、入社日までに貴社へ通勤可能な地域に転居いたします(転居先は〇〇市近辺を予定)」

 採用担当者が遠方の応募者に対して最も気にするのは「本当に来られるのか」「入社日に間に合うのか」という点です。転居の意思と時期を具体的に書くことで、この不安を先回りして解消できます。一般的に、物件探しから賃貸契約、引っ越し完了までは2週間〜1ヶ月程度かかるため、面接では「内定後○週間で転居可能です」と答えられるよう準備しておきましょう。

 また、単身の引っ越し費用は同一県内で3〜5万円、県をまたぐ長距離では5〜10万円程度が相場です(繁忙期の3〜4月はさらに2〜5割増)。これに賃貸の初期費用(家賃の4〜5ヶ月分が目安)が加わるため、UIターン転職では転居資金として30〜50万円程度を見込んでおくと安心です。企業によっては転居費用の補助や社宅制度があるため、面接や内定後の条件確認の際に聞いておきましょう。

4.3 結婚・家族の転勤にともなう転居の場合

 結婚を機に転居して転職するケースでは、転居時期が決まっていることが多いため、時期も添えると丁寧です。

  • 記入例:約25分(2026年10月に〇〇市へ転居予定のため、転居後の見込み時間です)

 なお、転居と合わせて扶養家族の状況が変わる場合は、扶養家族欄の書き方も確認しておきましょう。

 関連記事:履歴書の扶養家族欄の書き方|配偶者・数え方

5. 通勤時間欄でやりがちなNG例5つ

 小さな欄だからこそ、間違いは目立ちます。よくあるNG例を確認しておきましょう。

  • NG1:往復の時間を書く——「約1時間40分」と書いたつもりが、片道50分の往復だった。採用担当者は片道として読むため、実態より遠いと誤解されます
  • NG2:空欄のまま提出する——空欄は「書き忘れ」か「書き方が分からない」と受け取られます。近距離でも在宅勤務でも、必ず何かしら記入します
  • NG3:実際より短く書く——通勤手当は申告された経路・時間をもとに算定されます。入社後に発覚すると手当の返還や信頼低下につながります
  • NG4:分単位まで細かく書く——「47分」「1時間3分」は正確ですが、慣例から外れて逆に目立ちます。5分単位に切り上げましょう
  • NG5:現住所からの時間をそのまま書く(転居予定なのに)——「通勤2時間30分」とだけ書かれていると、それだけで選考対象外になることがあります。転居予定は必ず明記します

6. 採用担当者は通勤時間欄のどこを見ているのか

 そもそも、なぜ履歴書に通勤時間欄があるのでしょうか。採用担当者の視点を知っておくと、書き方の判断に迷わなくなります。

6.1 長く働き続けられるかの判断材料

 通勤時間は定着率と関係があるとされ、多くの企業が採用時の考慮要素にしています。一般に片道1時間30分を超えると「継続して通えるか」を懸念される傾向があります。総務省の社会生活基本調査では、通勤・通学時間の全国平均は往復で約1時間19分(片道約40分)とされており、これを大きく超える場合は面接で理由や対策を聞かれる可能性が高いと考えておきましょう。

6.2 通勤手当・配属の実務情報

 通勤手当には「月○万円まで」といった上限を設けている企業が多くあります。また、複数拠点がある企業では、自宅からの距離が配属先決定の参考にされることもあります。通勤時間欄は選考だけでなく、入社後の労務手続きの基礎情報としても使われるため、正確に書くことが大切です。

6.3 通勤時間が長い場合の面接対策

 片道1時間30分を超える場合は、面接で「通勤は大丈夫ですか」と聞かれる前提で回答を準備しておきましょう。回答例は次のとおりです。

  • 「現職でも同程度の通勤を3年続けており、支障はありません」(実績で示す)
  • 「始発駅からの乗車のため座って通勤でき、負担は大きくありません」(具体的な事情で示す)
  • 「採用いただけた場合は、通勤しやすいエリアへの転居も検討しています」(対応策で示す)

7. 提出前チェックリスト

 最後に、通勤時間欄の提出前チェックリストをまとめます。書き終えたら30秒で確認しましょう。

  • 片道の時間になっているか(往復ではないか)
  • ドアツードアで計算したか(徒歩・乗り換え・待ち時間込み)
  • □ 通勤ラッシュの時間帯を指定して検索したか
  • □ 端数は5分単位に切り上げた
  • □ 車・自転車通勤の場合、交通手段を明記したか
  • □ 引っ越し予定がある場合、転居後の時間+転居予定の明記になっているか
  • □ 空欄になっていないか

8. まとめ

 この記事では、履歴書の通勤時間欄の書き方を解説しました。ポイントを整理します。

 基本ルールは「片道・ドアツードア・5分単位切り上げ」の3点です。時間帯を指定して乗換案内アプリで検索し、徒歩時間を足して算出します。車通勤の場合は「(自家用車利用)」と手段を明記し、車通勤の希望は本人希望欄に書き添えましょう。

 引っ越し予定がある場合は、現住所からの時間ではなく転居後の見込み時間を書き、転居の意思と時期を明記するのが鉄則です。遠方からの応募では、採用担当者の「本当に来られるのか」という不安を先回りして解消することが、選考を有利に進める鍵になります。

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