1. 本人希望欄の役割と基本ルール

 本人希望欄は履歴書の最後にある自由記入スペースで、応募者から企業に条件面の情報を伝えるための場所です。まず役割と基本ルールを正しく理解しましょう。

1.1 本人希望欄の2つの目的

  • 入社可否に関わる必須条件の共有:勤務地・勤務時間・家庭事情など、入社後の合意に必要な情報
  • 複数職種募集の企業への希望伝達:応募職種・希望部署を明確にし、書類の振り分けをスムーズにする

 本人希望欄は「要望を羅列する場」ではなく「ミスマッチを防ぐ場」と考えるのが基本です。

1.2 書いてよいこと・書かない方がいいこと

 書いてよいこと:

  • 応募職種・希望部署(複数募集の場合)
  • 勤務地の制限(家族事情・通院等)
  • 勤務時間・曜日の制約(育児・介護等)
  • 特殊な配慮事項(障害・持病等)
  • 連絡先や連絡可能時間帯

 書かない方がいいこと:

  • 給与の具体的な希望額(原則面接や内定後に交渉)
  • 残業できない(明確な理由なし)
  • 休日の希望(通常勤務日数以上の休み)
  • 入社後の希望(昇進・海外勤務等)
  • 曖昧な要望(「可能な限り」「できれば」の連発)

1.3 「空欄」と「貴社規定に従います」の違い

 本人希望欄を「空欄」にすると、書き忘れ・意欲不足と解釈される可能性があります。特に指定がない場合は「貴社規定に従います」と一文書くのがマナーです。ただし、配慮が必要な事情がある場合は必ず具体的に記入しましょう。

1.4 記入スペースの目安

 本人希望欄は履歴書の最下部で、高さは3〜5cm程度です。2〜4行でコンパクトにまとめるのが理想で、長文や箇条書きで枠を超えるのは避けます。どうしても伝えたい事情が多い場合は、職務経歴書の冒頭または送付状で補足しましょう。

2. 「貴社規定に従います」の正しい使い方

 最も一般的な書き方がこの定型文ですが、使い所を間違えると逆効果になります。

2.1 「貴社規定に従います」が適切なケース

  • 特別な希望・事情がない
  • 給与・待遇面で特別な希望がない
  • 勤務地・勤務時間等に制約がない
  • 応募職種が1つのみの会社

2.2 「貴社規定に従います」がNGなケース

  • 複数職種・複数勤務地から選ぶ会社:どの職種・勤務地希望かを明示する必要あり
  • 譲れない条件がある場合:例えば「通院で毎週水曜午後を休む必要がある」等
  • 転居不可の事情がある場合:転勤ありの求人で限定希望を伝える場合

2.3 誤用されがちな表記パターン

  • ×「貴社規定に従います。ただし給与は〇〇万円以上を希望」→ 矛盾しており不誠実
  • ×「貴社規定に準じます」→ 「従う」が正しい表現
  • ×「御社規定に従います」→ 書き言葉は「貴社」、話し言葉は「御社」

2.4 敬語の基本

 履歴書は書き言葉のため「貴社」を使うのが原則です。「御社」は面接や電話など話し言葉で使います。ただし、役所や官公庁に応募する場合は「貴庁」、学校法人なら「貴学園」と使い分けましょう。

3. 応募職種・希望部署の書き方

 複数の職種・部署を募集している企業では、応募職種を明示することで書類のミスルーティングを防げます。

3.1 応募職種を書く場面

  • 求人サイトに複数職種の募集が並んでいる企業
  • 企業HPの採用ページから応募するケース
  • 転職エージェント経由でも職種が複数選べる場合

3.2 書き方テンプレート

 基本パターン:

  • 「営業職を希望します」
  • 「法人営業(東京支社)での勤務を希望いたします」
  • 「2月15日付求人の〇〇職に応募いたします」

 第1・第2希望まで書く場合:

  • 「第一希望:マーケティング職/第二希望:企画職」

3.3 採用担当者への配慮の一文

 求人票の情報と履歴書をすぐに紐付けられるよう、求人サイト名や掲載日を記載する配慮も好印象です。例:「2026年4月20日付〇〇転職掲載の営業職に応募いたします」。

 関連記事:志望動機の書き方完全ガイド〜業界・職種別の例文と採用担当が見るポイント

4. 勤務地・勤務時間の希望伝達

 最もトラブルになりやすいのが勤務地・勤務時間の希望です。伝え方を間違えると選考前に落ちるリスクがあります。

4.1 勤務地の希望を書く基本ルール

  • 明確な事情がある場合のみ書く(家族の介護・配偶者の転勤不可等)
  • 「なんとなく地元希望」程度では書かない方が無難
  • 勤務地を限定する場合は理由を一言添える

4.2 勤務地希望の例文

  • 「家族の介護のため、静岡県内での勤務を希望いたします」
  • 「配偶者の勤務地の都合上、滋賀支社での勤務を希望いたします」
  • 「通院のため、現住所から通勤可能範囲での勤務を希望いたします」

4.3 転勤可否の伝え方

  • 「全国転勤可」→ 積極姿勢、総合職で有利
  • 「〇〇県内での転勤は可」→ エリア限定で明示
  • 「当面は現住所からの通勤が可能な勤務地を希望」→ 将来的な選択肢を残す

4.4 勤務時間・曜日の希望

 育児・介護・通院などで勤務時間に制約がある場合は、具体的な時間帯と理由を端的に記載します。

  • 「育児中のため、17:30までの勤務を希望いたします」
  • 「通院のため、月1回火曜午前中の休暇取得をお願いすることがあります」
  • 「〇〇資格の更新講習のため、年1回2日間の休暇取得を予定しております」

4.5 リモートワーク・在宅勤務の希望

 コロナ禍以降、在宅勤務の希望を書く方が増えています。記載する場合は「完全在宅」ではなく「週◯日の在宅勤務希望」のように柔軟性を示すと、企業側も前向きに検討しやすくなります。

5. 給与・待遇の希望の書き方

 給与希望を履歴書に書くかは迷うところです。原則・例外を押さえて判断しましょう。

5.1 原則:本人希望欄には書かない

 給与希望は面接または内定後の条件交渉フェーズで話し合うのが一般的です。履歴書に具体額を書くと「条件重視の人」というイメージを与えやすく、書類段階で不利になることがあります。

5.2 例外:求人票で希望給与の記載を指定されている場合

 一部の求人では「履歴書に希望年収を記載してください」と指示されることがあります。その場合は指示に従い、以下のような表現で記載します:

  • 「前職年収450万円を考慮いただき、貴社規定に従います」
  • 「希望年収:500万円〜(前職比+50万円)」
  • 「現職年収500万円、希望年収は貴社規定に準じます」

5.3 希望額の相場感

  • 前職年収+5〜15%が一般的な交渉可能範囲
  • 未経験業界・職種への転職では前職同等〜微減も現実的
  • 経験職種で実績ある場合は+20%も交渉可能

 関連記事:転職先の給与交渉の進め方〜年収アップを勝ち取るコツ

6. 家庭事情・健康面の伝え方

 育児・介護・健康問題など、働き方に影響する家庭事情は丁寧に伝える必要があります。

6.1 育児中の場合

  • 「小学1年生の子どもがおり、時短勤務(17:00まで)を希望いたします」
  • 「保育園の送迎のため、始業9:00以降・終業18:00までの勤務を希望いたします」

6.2 介護中の場合

  • 「父の介護のため、週1回の通院付き添いで半休取得があります」
  • 「家族介護のため、関西圏内の勤務地を希望いたします」

6.3 持病・健康上の配慮が必要な場合

 持病や定期通院がある場合は、具体的な業務への影響度と配慮事項のみを簡潔に記載します。病名の詳細記載は必須ではありません。

  • 「通院のため、月1回金曜午前中の通院配慮をお願いいたします」
  • 「長時間の立ち仕事が難しいため、デスクワーク中心の業務を希望いたします」

6.4 障害者雇用で応募する場合

  • 「障害者手帳2級所持。視覚補助具を使用することで通常のPC業務が可能です」
  • 「車椅子使用のため、段差のない執務環境を希望いたします」

 障害者雇用では配慮が必要な具体的事項を明記することで、入社後の合理的配慮の合意がスムーズに進みます

7. 連絡先・面接日程の希望

 在職中の転職活動では、連絡方法にも配慮が必要です。

7.1 連絡可能時間帯の記載例

  • 「在職中のため、平日18:00以降または土日のご連絡希望」
  • 「日中は携帯電話がつながりにくいため、メールでのご連絡希望」
  • 「お電話は19:00以降に頂戴できますと幸いです」

7.2 面接日程の希望

  • 「面接は平日夜間(18:00以降)または土日を希望いたします」
  • 「有給取得の関係上、面接日のご連絡は1週間前までにいただけますと幸いです」

7.3 在職中の方が特に注意すること

 会社支給の携帯・メールアドレスは絶対に使わないこと。また、自宅電話番号や同居家族の電話も避け、個人の携帯電話番号と個人メールアドレスを記載します。SMSでの連絡を希望する場合はその旨を明記、LINE等のチャットツールを希望する場合はIDの書き方ルールを事前に確認してください。面接案内のメールが迷惑メールに振り分けられないよう、ドメイン指定受信の設定も忘れずに行いましょう。

 関連記事:在職中の転職活動の両立テクニック〜バレずに進めるスケジュール管理と注意点

8. NG例と改善例〜やってはいけない書き方

 採用担当者から「書類段階で不採用」にされがちなNG表現と、その改善例を紹介します。

8.1 条件重視すぎるNG例

 NG:「年収600万円以上、残業なし、土日祝休み、フルリモート希望」

 改善:「前職年収550万円を考慮のうえ、貴社規定に従います」(条件は面接で相談)

8.2 曖昧すぎるNG例

 NG:「できれば東京、残業は少なめ希望、時々リモートも可能なら」

 改善:「東京支社での勤務を希望いたします(家族の介護のため)」

8.3 主張が強すぎるNG例

 NG:「営業職は絶対嫌です。企画職以外は応募しません」

 改善:「これまでの経験を活かし、企画職での勤務を希望いたします」

8.4 プライベートを書きすぎるNG例

 NG:「親の介護と子育てで忙しいため、残業ゼロでお願いします。土日も友人との予定が多いため出勤は不可です」

 改善:「育児と介護のため、定時(18:00)までの勤務を希望いたします」

8.5 そもそも書かない方がいいNG例

  • 転職回数の言い訳(「前職は体調不良で短期退職となりました」等)
  • 過度な謙遜(「未熟者ですがよろしくお願いします」等)
  • 入社後の野心(「3年以内に管理職を目指します」等)

9. すぐ使えるテンプレート集

 典型的なケース別に、そのまま使えるテンプレート例文を用意しました。

9.1 特に希望なし

  • 「貴社規定に従います。」
  • 「貴社規定に従います。何卒よろしくお願い申し上げます。」

9.2 応募職種の明記

  • 「営業職(第1希望)/マーケティング職(第2希望)での選考を希望いたします。その他の条件につきましては貴社規定に従います。」

9.3 勤務地希望あり

  • 「家族の介護のため、静岡県内での勤務を希望いたします。その他条件につきましては貴社規定に従います。」

9.4 育児中・時短希望

  • 「保育園の送迎のため、始業9:00・終業17:30までの時短勤務を希望いたします。将来的にはフルタイム勤務への復帰を希望しております。」

9.5 通院・持病配慮

  • 「月1回、火曜午前中の通院配慮をお願いいたします。その他の勤務条件については貴社規定に従います。」

9.6 連絡時間の指定

  • 「在職中のため、平日18:00以降または土日のご連絡をお願いいたします。メールでのご連絡も随時確認可能です。」

9.7 複合ケース(応募職種+勤務地+時間)

  • 「営業職での勤務を希望いたします。家族の事情により静岡県内での勤務、および18:00までの定時勤務を希望いたします。その他条件については貴社規定に従います。」

10. まとめ〜本人希望欄チェックリスト

 最後に、本人希望欄を書く際のチェックリストを整理します。

 記入内容の確認

  • 応募職種が複数ある会社なら希望職種を明示したか
  • 勤務地・勤務時間に制約があれば理由とともに記載したか
  • 「貴社規定に従います」を適切な場面で使えているか
  • 給与の具体額を本人希望欄に書いていないか(指定がある場合を除く)
  • 条件を羅列しすぎていないか

 表現の確認

  • 「貴社」を使っているか(話し言葉の「御社」になっていないか)
  • です・ます調で統一されているか
  • 主張が強すぎる表現になっていないか
  • プライベートすぎる内容を書いていないか

 レイアウトの確認

  • 2〜4行のコンパクトな記載になっているか
  • 枠からはみ出していないか
  • 空欄のまま提出していないか

 本人希望欄は「譲れないことだけを端的に伝える場」です。書きすぎず、かといって空欄にもせず、採用担当者が読みやすい形でまとめることが書類選考通過への近道です。『転職どうでしょう』では、履歴書・職務経歴書の個別添削も行っています。「本人希望欄の書き方に迷っている」「時短希望の伝え方を相談したい」という方は、公式LINEからお気軽にご相談ください。