1. 在職中の職務経歴書が「退職後」と違う3つの点

 在職中に作成する職務経歴書は、退職後に書く場合といくつか異なる注意点があります。違いを理解しておくと、書式のミスを防げます。

  • 在籍期間が確定していない:終了月が決まっていないため、締め方に専用のルールがある
  • 実績が進行中:成果がまだ出ていない、または途中段階のプロジェクトをどう書くかが課題になる
  • 守秘義務に注意が必要:現職の社外秘情報を書くと、入社後の信頼にも関わる

 なお、在職中の転職活動はスケジュール管理そのものが難しいテーマです。書類作成と並行して進め方を整えたい方は、在職中の転職活動の両立テクニック〜バレずに進めるスケジュール管理と注意点もあわせてご覧ください。

 厚生労働省の調査によると、転職者のうち約7割は在職中に次の仕事を決めてから退職しています。つまり「働きながらの書類作成」はむしろ多数派であり、採用担当者も在職中の応募を前提に書類を読んでいます。書き方のルールさえ押さえれば、在職中であることはマイナスにはなりません。

2. 現職は「現在に至る」で締めるのが基本

 在職中の職務経歴書では、現職の職務経歴の末尾を「現在に至る」で締めるのが基本ルールです。職歴の最後の行に記載します。

 記載例は次のとおりです。

  • 2021年4月 株式会社○○入社
  • (業務内容を記載)
  • 現在に至る

2.1 「以上」との使い分け

 職務経歴書では、最後に「以上」を右寄せで記載して文書の終わりを示します。在職中の場合は、職歴欄の末尾に「現在に至る」、文書全体の最後に「以上」と書くのが正しい形です。両方を書く点に注意しましょう。

2.2 退職予定日が決まっている場合

 すでに退職日が確定している場合は、その情報を添えると採用担当者が入社可能時期を判断しやすくなります。次のように書きます。

  • 「現在に至る(2026年8月末日付で退職予定)」
  • 備考欄に「現在勤務先には退職の意向を伝えており、2026年8月末日付で退職予定です」と補足

 退職日が未定の場合は無理に書く必要はありませんが、面接では入社可能時期を必ず聞かれるため、おおよその目安を考えておきましょう。退職の進め方は円満退職の進め方〜上司への切り出し方から引き継ぎ・最終出社日までが参考になります。

2.3 職歴欄の記載見本

 在職中の職歴欄は、次のように書きます。入社年月から現在までを時系列で示し、末尾を「現在に至る」で締めるのが基本形です。

  • 2021年4月 株式会社○○商事 入社
  •  法人営業部に配属。中小企業向けにオフィス機器の提案営業を担当
  • 2024年4月 同社 主任に昇格
  •  チームリーダーとしてメンバー4名のマネジメントを担当
  • 現在に至る
  • 以上

 昇格や異動があった場合は、その都度の年月と役割の変化を書くと、社内での評価やキャリアの積み上げが伝わります。

3. 進行中のプロジェクトの書き方

 現職では、まだ完了していないプロジェクトを担当しているケースが多いものです。進行中の業務も、書き方を工夫すれば十分にアピール材料になります。

 ポイントは「現時点での役割と進捗」を明確にすることです。

  • 良い例:「基幹システム刷新プロジェクト(2025年10月〜進行中)にてプロジェクトリーダーを担当。要件定義を完了し、現在は開発フェーズの進捗管理を担当(メンバー5名)」
  • 避けたい例:「システム導入を担当」(規模・役割・進捗が不明)

 進行中であっても、自分が何をどこまで担ったかを具体的に書けば、責任範囲とスキルが伝わります。「進行中」と明記することで、誇張ではないという誠実さも示せます。

3.1 進行中の業務を魅力的に見せる3つの要素

 進行中のプロジェクトを書くときは、次の3つの要素を意識すると、未完了でも十分な訴求力が出ます。

  • 規模:予算、関係人数、対象範囲など(例:「総額3,000万円規模」「全国20拠点を対象」)
  • 役割:自分の立場と責任範囲(例:「プロジェクトリーダーとして全体進行を統括」)
  • 現在地:どのフェーズまで進んでいるか(例:「要件定義・設計を完了し、開発フェーズに移行中」)

 この3要素を1〜2文にまとめると、「現在、総額3,000万円規模の基幹システム刷新プロジェクトにてリーダーを務め、要件定義を完了し開発フェーズの進捗管理を担当(メンバー5名)」のように、進行中でも具体性のある記述になります。

4. まだ出ていない実績の伝え方

 現職での成果がまだ数字として出ていない場合、無理に確定値を書くのは禁物です。代わりに、次の3つの方法で表現します。

4.1 中間指標・見込み値を使う

 最終成果が出ていなくても、途中段階の指標は示せます。「上半期時点で目標達成率110%」「導入後3か月で問い合わせ件数が20%減少」など、現時点で確定している数字を使いましょう。見込みを書く場合は「着地見込み」と明記します。

4.2 取り組みのプロセスを評価対象にする

 成果が出ていなくても、「どんな課題に対し、どう動いたか」というプロセスは評価されます。実績の数値化が難しいときは、職務経歴書の数字で実績を伝える書き方を参考に、行動量や改善幅を数字に置き換えてみてください。

4.3 守秘義務に配慮する

 現職の具体的な売上額や顧客名、社外秘の数値は記載を避けます。「大手通信会社(社名非公開)向けの案件」「売上は前年比◯%増(具体額は守秘のため割愛)」のように、固有情報をぼかしつつ規模感を伝えるのがマナーです。この配慮は、採用担当者に「入社後も情報管理ができる人だ」という安心感を与えます。

4.4 表現の言い換え例

 守秘義務に配慮しながら実績を伝えるための、言い換えの具体例をまとめます。左の「避けたい表現」を右の「望ましい表現」に置き換えてみてください。

  • 「A社(実名)向けに月500万円を受注」→「大手メーカー向けに、部署目標の約120%にあたる受注を獲得」
  • 「社内システムの○○の不具合を修正」→「基幹システムの運用改善を担当し、月次の処理エラーを大幅に削減」
  • 「来期の新商品△△を開発中」→「新商品の開発プロジェクトに企画段階から参画(詳細は守秘のため割愛)」

 数字の絶対値が出せないときは、「目標比」「前年比」「○%」といった相対値に置き換えると、固有情報を守りながら成果の大きさを伝えられます。

5. 在職中ならではの職務要約の書き方

 職務経歴書の冒頭に置く職務要約でも、在職中であることを自然に織り込みます。現職を主語にして「現在は〜を担当しています」と現在形で書くと、いきいきとした印象になります。

 例文:「大学卒業後、株式会社○○に入社し、法人営業として5年間従事してまいりました。現在はチームリーダーとしてメンバー4名のマネジメントを担いながら、新規顧客開拓にも注力しております。」

 冒頭3行で読み手の関心をつかむ書き方は、職務経歴書の職務要約の書き方〜冒頭3行の例文集で詳しく解説しています。

5.1 「在職中だからこそ」書ける強み

 在職中の応募には、退職済みの人にはない強みがあります。それは最新の業務に今まさに携わっているという点です。次のような表現で、現在進行形の経験をアピールしましょう。

  • 「現在も第一線で○○業務に従事しており、最新の業界動向を踏まえた提案が可能です」
  • 「直近では新システムの導入に携わっており、変化対応力を実務で発揮しています」

 ブランクがないこと自体も、採用担当者にとっては「業務勘が鈍っていない」という安心材料になります。在職中であることを引け目に感じず、むしろ強みとして打ち出しましょう。

5.2 職務要約の例文パターン

 在職中の職務要約は、立場や転職理由に応じて書き分けると効果的です。代表的な3パターンの冒頭例を紹介します。

  • キャリアアップ型:「現在は法人営業のリーダーとして5名のチームを統括しております。マネジメント経験を活かし、より大きな組織で事業成長に貢献したく転職を希望しております。」
  • 専門性追求型:「現職では○○分野の業務に5年間従事し、専門性を磨いてまいりました。この強みをさらに深く活かせる環境を求めております。」
  • 領域拡大型:「現在は△△業務を担当しておりますが、隣接領域である□□にも挑戦し、業務の幅を広げたいと考えております。」

 いずれも「現在は〜しています」という現在進行形で始め、そこから転職で叶えたい方向性につなげるのが、在職中らしい自然な流れです。

6. 在職中の応募で気をつけたいマナー

 書式以外にも、在職中ならではの配慮ポイントがあります。応募前に確認しておきましょう。

  • 提出日(作成日)は最新に:職務経歴書の右上の日付は、提出するタイミングの日付に更新する
  • 現職への連絡可否:履歴書の連絡先は私用の携帯・メールを使い、現職に電話がいかないよう配慮
  • 応募書類の使い回しに注意:現職在籍を前提にした表現が、退職後の応募で残らないようにする
  • 面接日程は現職に支障のない範囲で:有給や時間休を活用し、業務に穴を空けない

6.1 よくある疑問Q&A

 在職中の応募でよく寄せられる質問にお答えします。

  • Q. 退職理由は職務経歴書に書くべき?
    A. 職務経歴書に退職理由を書く必要は基本的にありません。在職中であればなおさらです。理由は面接で問われた際に前向きに伝えれば十分です。
  • Q. 現職の会社名は伏せたほうがいい?
    A. 会社名は正式名称で記載するのが原則です。伏せると経歴の信ぴょう性が下がります。ただし守秘性の高い取引先名などは伏せて構いません。
  • Q. 入社可能時期はどう答える?
    A. 「内定後、引き継ぎを考慮し1〜2か月以内」と伝えるのが一般的です。退職交渉の期間を見込んで現実的な時期を示しましょう。

6.2 提出形式と更新管理のコツ

 在職中は複数社に並行して応募することが多いため、書類のバージョン管理が重要になります。次の点を意識しておくと、応募のたびに慌てずに済みます。

  • ベース版とカスタマイズ版を分ける:共通の「ベース職務経歴書」を1つ作り、応募先ごとに志望動機や強調点だけを差し替える
  • ファイル名に応募先と日付を入れる:「職務経歴書_田中太郎_○○社_20260604.pdf」のように管理すると取り違えを防げる
  • 提出はPDF形式が無難:レイアウト崩れを防ぎ、どの環境でも同じ見た目で読んでもらえる
  • 現職在籍を前提にした表現の消し忘れに注意:退職後に同じ書類を使う際は「現在に至る」の記載を見直す

 特に在職中は時間が限られるため、最初に整った1通を作り込んでおくことが、結果的にいちばんの時短になります。

7. 提出前チェックリスト

 最後に、在職中の職務経歴書を提出する前のチェックリストをまとめます。

  • □ 現職の職歴末尾に「現在に至る」を記載したか
  • □ 文書末尾に「以上」を右寄せで記載したか
  • □ 進行中のプロジェクトは役割と進捗を明記したか
  • □ 未確定の実績を確定値のように書いていないか
  • □ 守秘義務に触れる固有情報を書いていないか
  • □ 退職予定日(決まっていれば)を補足したか
  • □ 作成日を最新に更新したか

 提出前の総点検には、書類選考の通過率を上げる応募書類の見直し方もあわせて活用してください。特に在職中は、現職の業務に追われて見直しの時間を取りにくいものです。提出の前夜にまとめてチェックするのではなく、作成した日と提出する日の最低2回に分けて読み返すと、誤字や記載漏れに気づきやすくなります。

8. まとめ

 この記事では、在職中の職務経歴書の書き方を解説しました。

 在職中の最大のポイントは、現職を「現在に至る」で締め、進行中の業務や未確定の実績を誠実かつ具体的に書くことです。成果が途中でも、役割と進捗を明確にすれば十分なアピールになります。同時に、守秘義務への配慮や現職への連絡可否といったマナーを守ることで、採用担当者に「信頼できる人材」という印象を与えられます。

 働きながらの転職活動は時間との戦いでもあります。書類作成に時間をかけすぎて疲弊しないよう、今回紹介した書式ルールと例文を雛形として活用し、効率よく仕上げてください。一度しっかりした職務経歴書を作っておけば、応募先ごとに志望動機や強調点を調整するだけで使い回せるようになります。

 『転職どうでしょう』では、在職中の転職活動を無理なく進めるためのサポートをおこなっています。「働きながらの転職活動が不安」「現職の書き方に自信がない」といったお悩みがありましたら、お気軽に転職相談フォームからご相談ください。