1. 履歴書の健康状態欄は何のためにある?
健康状態欄は、応募者を落とすための欄ではなく、企業が「業務遂行に必要な配慮があるか」を確認するための欄です。企業には労働契約法第5条にもとづく安全配慮義務があり、従業員が安全に働けるよう職場環境を整える責任を負っています。夜勤や重量物の運搬、長時間の立ち仕事など、業務内容によっては健康上の配慮が必要になるため、事前に確認しているのです。
つまり企業が知りたいのは病歴そのものではなく、次の2点に集約されます。
- 予定している業務を問題なく遂行できるか
- 勤務にあたって何らかの配慮(通院日の確保など)が必要か
この目的を理解しておくと、「何を書くべきで、何を書かなくてよいか」の判断がしやすくなります。業務に影響しない事情まで細かく書く必要はありません。
なお、近年は健康状態欄の位置づけ自体が変わってきています。2021年4月に厚生労働省が公表した履歴書の様式例には、健康状態欄はそもそも設けられていません。応募者のプライバシーに関わる情報だからです。この点は後の章で詳しく説明します。
2. 基本の書き方|健康なら「良好」と書く
業務に支障のある健康上の問題がない場合は、シンプルに「良好」と書けば十分です。空欄のまま提出するのは「書き忘れ」と受け取られるおそれがあるため避けましょう。
2.1 そのまま使える基本の記入例
- 「良好」——最も標準的な書き方。これだけで問題ありません
- 「良好(業務に支障はありません)」——一言添えて丁寧に伝えたい場合
- 「極めて良好(過去5年間、病欠なし)」——体力が求められる職種で健康面を強みにしたい場合
皆勤や体力に自信がある方は、3つ目の例のように具体的な事実を添えると、健康状態欄をアピールに変えることができます。営業職やドライバー職、介護職など、体が資本の仕事では特に有効です。
2.2 やってはいけないNGな書き方
- 空欄のまま提出する——記入漏れとみなされ、確認力を疑われます
- 「普通」「特になし」と書く——質問の趣旨に合っておらず、曖昧な印象を与えます
- 業務に関係ない不調を細かく書く——「花粉症です」「肩こりがあります」などは不要です
- 虚偽の記載をする——業務に明らかに支障がある状態を「良好」と偽るのは避けましょう
風邪をひきやすい、疲れやすいといった自覚程度の話は書く必要がありません。あくまで「業務への支障の有無」が基準です。
なお、この書き方は正社員の応募に限らず、アルバイト・パート・契約社員の履歴書でも同じです。雇用形態によって健康状態欄のルールが変わることはありません。また、健康状態欄は修正テープや二重線での訂正を避けたい欄でもあります。書き損じた場合は、面倒でも新しい用紙に書き直すのが無難です。
3. 持病・通院がある場合の判断基準
悩ましいのは、持病や通院がある場合です。判断の軸はただひとつ、「応募先の業務に支障があるか、配慮が必要か」です。次の2つに分けて考えましょう。
3.1 業務に支障がない場合は「良好」でよい
服薬でコントロールできている高血圧や、業務に影響のないアレルギー、完治した過去の病気などは、記載しなくても問題ありません。「良好」と書いてよいケースです。
健康状態欄で求められているのは「業務に支障がない」ことの申告であり、既往歴の一覧ではないからです。医師から日常生活・就労に制限なしと言われている状態なら、堂々と「良好」と書きましょう。
3.2 配慮が必要な場合は「事実+支障の程度」を簡潔に
一方、定期通院で特定の曜日に休みが必要、重量物の取り扱いに制限がある、といった勤務条件に関わる事情は記載しておくべきです。入社後に発覚すると、信頼関係を損ねたり、配属のミスマッチが起きたりするリスクがあるためです。
書き方のポイントは次の3つです。
- 病名の詳細より「業務への影響」を中心に書く——詳しい病名を書く義務はありません
- できないことだけでなく「できること」を添える——「通常業務に支障はありません」の一言が重要です
- 配慮してほしい内容を具体的に書く——「月1回の通院のため平日に半日の休みをいただく場合があります」など
なお、通院日の調整といった勤務条件に関わる希望は、健康状態欄ではなく本人希望欄にまとめて書く方法もあります。
関連記事:履歴書の本人希望欄〜書き方と注意点
4. 病歴の申告義務はある?知っておきたいルール
「書かないと経歴詐称になるのでは」という不安を持つ方は多いですが、法律上の整理を知っておくと安心できます。
4.1 病歴の告知義務は原則としてない
応募者には、聞かれていない病歴を自分から申告する法的義務は原則ありません。厚生労働省の指針でも、病歴などの機微な個人情報は、企業側が収集する場合に本人同意と業務上の必要性が求められる情報とされています。つまり、業務に支障のない病歴を書かなかったこと自体が「詐称」になることは基本的にないのです。
ただし例外として、業務遂行に直接影響する健康状態について虚偽の申告をした場合は、入社後にトラブルとなり、最悪の場合は内定取り消しや懲戒の理由とされるおそれがあります。「隠す」のではなく「業務に関係あることは正直に、関係ないことは書かない」という線引きが正解です。
4.2 入社時の健康診断と履歴書の関係
「どうせ健康診断でわかるなら、書いても書かなくても同じでは」と考える方もいるでしょう。企業には労働安全衛生規則第43条により、常時使用する労働者を雇い入れる際の健康診断(雇入時健診)が義務づけられています。ただしこれは入社後の健康管理のための制度であり、採用選考のふるいにかけるためのものではありません。厚生労働省も、採用選考時に合理的・客観的な必要性がない健康診断を実施することは就職差別につながるおそれがあるとして注意喚起しています。
したがって「健診で不利になるから」と過度に心配する必要はありません。逆に、業務に直接影響する事情を隠して入社し、健診や勤務開始後に発覚して信頼を失う方がリスクは大きいといえます。判断基準はやはり「業務への支障の有無」です。
4.3 障害者手帳を持っている場合はオープン・クローズを選べる
障害者手帳をお持ちの方は、障害を開示して働く「オープン就労」と、開示せず一般枠で働く「クローズ就労」を自分で選べます。オープン就労では障害者雇用促進法にもとづく合理的配慮を受けやすくなる一方、クローズ就労では配慮を求めにくくなります。どちらを選ぶかによって健康状態欄の書き方も変わるため、まず就労スタイルの方針を決めてから記入しましょう。
5. ケース別の記入例文集
そのまま使える例文をケース別に紹介します。自分の状況に近いものをアレンジしてください。
5.1 持病があるが服薬でコントロールできている
「良好(持病はありますが服薬により安定しており、業務に支障はありません)」
病名を書かずに「支障がない」ことを伝える書き方です。詳細を伝える必要があると感じる場合のみ、面接で口頭補足すれば十分です。
5.2 定期通院が必要
「良好(月1回の定期通院がありますが、業務に支障はありません。通院は原則として休日に調整いたします)」
平日の通院が必要な場合は「月1回、平日に半日お休みをいただく場合がありますが、業務に支障はありません」と、頻度と程度を具体的に書きます。企業側がシフトや業務量を検討しやすくなります。
5.3 過去に病気で休職・退職したが現在は回復している
「良好(前職在職中に体調を崩し療養しましたが、現在は完治しており、医師からも就労に問題ないと診断を受けています)」
職歴に休職期間やブランクがある場合は、健康状態欄で「現在は問題ない」ことを明確に伝えると、採用担当者の不安を先回りして解消できます。
5.4 腰痛など業務内容によって配慮が必要
「良好(腰痛のため20kg以上の重量物の運搬は困難ですが、その他の業務に支障はありません)」
「できないこと」を具体的な数字で示しつつ、「その他は問題ない」とセットで書くのがポイントです。
5.5 メンタルヘルスの不調から回復した
「良好(現在、体調は安定しており、業務に支障はありません)」
通院を継続しながら働く場合は「月1回の通院を継続していますが、主治医から就労に問題ないと診断されています」と書く方法もあります。開示するかどうかは、再発予防のための配慮(残業の調整など)を求めたいかどうかで判断しましょう。判断に迷う場合は、主治医や支援機関に相談してから決めるのがおすすめです。
5.6 ケガから回復中で一時的な制限がある
「良好(現在、骨折のリハビリ中のため、○月までは長時間の立ち仕事を控えるよう医師の指示を受けていますが、それ以降は制限なく勤務可能です)」
一時的な制限は「いつまでか」の見通しをセットで書くのがポイントです。期限が明確なら、企業側も入社時期や当面の業務配分を調整しやすく、選考でのマイナスは小さくなります。
5.7 例文に共通する3つの型
ここまでの例文には共通の型があります。迷った時は次の順番で1〜2文にまとめてください。
- ①結論——「良好」または配慮が必要な事実
- ②程度・頻度——「月1回」「20kg以上」など具体的な数字
- ③支障の否定または見通し——「業務に支障はありません」「○月以降は制限なし」
この型で書けば、長々と説明せずに必要な情報だけを過不足なく伝えられます。
6. 健康状態欄のない履歴書を使うという選択肢
実は、健康状態欄の悩みを根本から解消する方法があります。健康状態欄のない履歴書様式を使うことです。
2021年4月に厚生労働省が公表した履歴書様式例には、健康状態欄がありません。それ以前に広く使われていたJIS規格の様式例も2020年に削除されており、現在は「性別欄は任意記載、健康状態欄なし」の厚労省様式が事実上の標準になりつつあります。市販の履歴書やテンプレートにも「厚生労働省履歴書様式例準拠」をうたうものが増えています。
企業から様式の指定がない限り、健康状態欄のない履歴書を使うことは何の問題もありません。次のように使い分けるとよいでしょう。
- 健康面で伝えるべき事情がない方——どの様式でも可。健康状態欄があれば「良好」と書く
- 配慮事項はないが病歴に触れたくない方——厚労省様式(健康状態欄なし)を選ぶとスムーズ
- 勤務にあたり配慮が必要な方——様式にかかわらず、本人希望欄や面接で必要な配慮を伝える
ただし、企業が独自フォーマットを指定してきた場合はそれに従います。健康状態欄がある様式を渡されたのに無断で別様式に差し替えるのは避けましょう。
7. 面接で健康状態を聞かれた時の答え方
健康状態は書類だけでなく、面接で確認されることもあります。答え方の原則は履歴書と同じで、「業務への支障の有無+必要な配慮」を簡潔に伝えることです。
7.1 回答の基本パターン
「健康状態は良好です。前職でも直近3年間、体調不良による欠勤はありません」のように、事実を1〜2文で答えれば十分です。通院がある場合は「月1回通院していますが、業務に支障はありません。通院は休日か有給で調整します」と、影響と対処をセットで伝えます。
7.2 答えたくない質問には無理に答えなくてよい
厚生労働省は公正な採用選考の観点から、業務に関係のない健康情報や病歴を尋ねることは望ましくないとしています。業務と無関係な既往歴を細かく聞かれた場合は、「業務に支障のある健康上の問題はありません」と、支障の有無に絞って答える形で問題ありません。すべての病歴を開示する義務はないことを覚えておきましょう。
7.3 配慮を求める場合は「貢献できること」とセットで
配慮事項を伝える時は、「〜できません」で終わらせず、「重量物の運搬には制限がありますが、フォークリフト免許を活かした業務では即戦力として貢献できます」のように、できること・貢献できることとセットで話すと前向きな印象になります。
8. まとめ
この記事では、履歴書の健康状態欄の書き方について解説しました。ポイントを整理します。
- 健康状態欄は「業務に支障があるか・配慮が必要か」を伝える欄であり、病歴の一覧ではない
- 支障がなければ「良好」でよい。空欄・「特になし」はNG
- 持病・通院があっても業務に支障がなければ「良好」と書いてよい
- 配慮が必要な場合は「事実+支障の程度+できること」を簡潔に書く
- 聞かれていない病歴を申告する義務は原則なく、厚労省様式には健康状態欄自体がない
健康状態欄は、正しく書けば採用担当者の不安を解消し、入社後のミスマッチを防ぐ味方になります。書くべきことと書かなくてよいことを整理して、自信を持って書類を仕上げてください。
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